相撲には、心技体が求められます。大関、横綱になればなるほど土俵上だけではなく、普段の行いにも厳しい視線が注がれる。人気職業だが当の本人にしてみれば決して居心地がいいわけでもないらしい。それはさておき、令和最初の九州場所では若手力士の活躍が期待され、連日大入り満員になるだろう。若いから腕力や体力、技術だけでは大関、横綱に昇進できない。大関、横綱になるには、心技体の「心」が重要だ。相撲は特に心に雑念があると勝てない。
心に雑念が多い力士だったのが今年1月に引退した横綱稀勢の里。ケガで引退を余儀なくされたとは、そこに至る伏線があったと僕は見ている。
その伏線とはなにか?
それは、仕切りをする時の「さがり」の捌き方である。
さがりの捌き方が悪かった稀勢の里
稀勢の里は早くから横綱を期待され、大関に昇進後は何度も優勝、そして横綱昇進へのチャンスはあったが、稀勢の里自身の気持ちの弱さと、白鵬という壁に阻止されて、毎年ファンの期待を裏切り続けていた。
稀勢の里ほど精神的な同様を表す力士も珍しく、彼の表情を見るだけで、勝ち負けの判断が相撲通にもわかるど。そうした気持ちの雑念は土俵上の仕切りにはっきりとわかる。
雑念が多い力士は、仕切りの時に下がりが数本くらい土についている。「土がつく」ということは相撲用語で「負ける」を意味する。
さがりは、両腕で左右に分けて、そのさがりをマワシと太ももの間にきちっと挟んで仕切りをするものだが、雑念が多い時の稀勢の里は、さがりがバラバラで、立ち会いも腰高になって相手優位になる取り組みが多かった。
初優勝した時の仕切りは集中していた
下の動画を見て欲しいが、稀勢の里が2017年初場所千秋楽で白鵬を破って、初優勝したときの稀勢の里の仕切りは実にキレイだった。さがりは一本も土に付くことなく、きちっと両マワシに挟んで仕切りをしていた。つまり雑念をすべて払って、この一戦に賭けた気持ちが優勝、そして横綱へと登りつめた。
ところが、昇進後の春場所は12連勝しておきながら、横綱日馬富士に土俵下に落とされて大怪我をした。この時の仕切りもさがりがバラバラで、数本が土についている。
その怪我が回復せずぜに、2019年初場所で引退をする短命横綱で終わった。横綱としての成績を見れば、昇進後の2018年春場所は優勝したが、その後は出ては休場を繰り返し、横綱とは程遠い成績に終わった。
大関を陥落した琴奨菊もさがりが雑だった
稀勢の里のライバルだった、元大関琴奨菊も、さがりに捌き方が雑な力士だった。
琴奨菊の場合は、仕切りをする前からさがりを両脇に分けずに、無造作に捌くので、仕切り動作も悪い。
下がりは土について、負け戦を最初からしているようなもので、30歳を過ぎたことから、大関陥落して、一度も大関復帰しないまま、幕内の番付を上下している。
白鵬、鶴竜の両横綱の仕切りに雑念はなくさがりの捌きもキレイ
横綱白鵬、鶴竜、元横綱日馬富士や、朝青龍たちのさがりの捌きに迷いはなかった。
若手の貴景勝、朝の山、阿炎、遠藤らの仕切り、さがりの捌き方はキレイですね。
おそらく大関、横綱へ上がっていくし、さがりが雑でない仕切りをする限り、番付を下げるようなことはないでしょう。
相撲は勝負だけを見るのではなくて、こうした玄人目で見るのも、違った楽しみ方がある。
あなたのご贔屓の力士の仕切り動作はどうなのか?
観察してみて、力士の表情や取り口を研究するのもおもしろいものです。